【作品紹介】特撮作品小話 No.1 特訓回?スポ根回?友情回?いっぱい詰まった一文字ライダー編珠玉の名エピソード!【感想】
1971年10月30日放映・仮面ライダー第31話「死斗! ありくい魔人アリガバリ」の紹介を致します。
その回のショッカーからのゲスト怪人はタイトルにもある通りありくいの改造人間、アリガバリ。
その声を演じるのは、村越伊知郎。
ゲスト子役の井崎タケオ少年の兄が友人と共に登山の最中に行方が知れなくなったところから物語は始まります。
もちろん、この失踪の裏で糸を引いているのはショッカーの怪人アリガバリなのですが、そこら辺は割愛、気になる方は是非観てね。
友人は帰らぬ人となりますが井崎兄は、タケオの許へ奇跡的に生還します。
しかし、兄の様子がおかしい事にタケオは気付いておりました。
そんな悩める少年タケオの友人、仮面ライダー・一文字隼人やその相棒・滝和也の弟分である石倉五朗少年は言います。
「死ぬような目に遭った人間は人が変わってしまう」と、井崎兄もそうなのではないかと、五朗は小学生でありながら達観した見解を述べました。
それに対しタケオ君はこう返します。
「食べ物の好みまで変わるものかな? 兄は帰ってきてからご飯すら食べずに夜中に何かをこっそり食べてるみたいなんだ」
「へえ、まるで怪談染みてるなあ」
と、五朗が言った後で人指し指を立て、タケオ少年こう続けます。
「ひとつ気になる事があるんだ、兄が帰ってきてから住んでる団地の周りから蟻が急にいなくなったんだ」
これはもはやタケオ少年は小学生ながらに気付いていると思われます。
何せこの世界、少なくとも大人達はショッカーも仮面ライダーの存在もまったく知りません。
ですが、子供達の間ではショッカーという悪の組織と戦う仮面ライダーの存在は認知されているのです。
まあ、こういった背景を深く考察をすれば、五朗少年がまず周囲の子供達に言い聞かせますよね、そうすればその周辺の子達からするとそれは事実となります。
五朗は孤児ですが、友達も多く、明るく、成績優秀なリーダーシップもある子です。
また、ショッカーは東京だけで活動しているわけでもなく、日本全土で計画を企てています。
そして、それを仮面ライダーが阻止します。
大人は何か不可思議な存在を見るとそれを否定してしまう悲しい生き物です、ですが子供は違います。
見たものをそのまま信じます、それは純粋だからでしょう。
そういった心理を見抜き、正義の心を幼少期から植え付け、利用したのが後の少年仮面ライダー隊の発足に繋がるのかもしれませんね。
私からのフォローは終わりです。
この後、五朗はおやっさんから懐中電灯を盗むとたまたま居合わせた一文字隼人に頼み込んで団地へと向かいます。
この辺りの五朗のまだまだ糞ガキ感ある行動は、彼とおやっさん、それから一文字隼人の間柄を要約しているようで、怒涛の展開への伏線にもなっているように思えます。
かくして五朗とタケオの両少年は井崎兄が深夜に蟻を貪り食べる現場を懐中電灯で照らし発見するのです。
「蟻を食べている!」懐中電灯を持つ五朗少年が驚きます。
「どうして蟻なんて食べるんだよ!」ショックのあまりタケオ少年は兄に掴み掛かります。
結構、ガチめに掴んだ兄を揺すります。
そして、兄がショッカーの計画の一端を話し始めると、タケオ少年引き吊った顔を更に歪めて怯えます。
そこへ更に追い討ちをかけるように現れるショッカーの戦闘員にアリガバリ。
だがしかし、そこへ高笑いと共に一文字隼人が、団地のどこかの部屋のベランダの高所から見下ろしながら登場するのです。
不法侵入なのではないのかという疑問は、格好良いのでこの際、捨て置きましょう。
仮面ライダーに変身する一文字隼人。
五朗の声援を受けて、アリガバリにライダーキックを放つ仮面ライダー。
しかしそれは、アリガバリに難なく弾かれてしまうのでした。
一文字隼人はかつて、ライダーキックを怪人に避けられてしまうような事態を経験した事はあるものの、真正面から弾き返されたのは今回が始めてなのです。
それを見た五朗は、仮面ライダーのピンチに叫びながら敵うはずもないアリガバリに突撃していき、仮面ライダーのライダーキックすら撥ね飛ばすアリガバリの一撃を受けてしまいます。
怒る仮面ライダーは、アリガバリに立ち向かいますが、やはり敗れてしまうのでした。
五朗少年はその後、病院に運び込まれてしまいます。
医者の先生が言うには、心に深い傷を負っているこの少年の体の傷と併せて、今日が峠であると。
そこへ自身も重症を負っているはずの一文字隼人が五朗の病室に現れます。
仮面ライダーの名前をうわ言のように呟く五朗を見て、一文字隼人は悲痛な面持ちでこう言います。
「仮面ライダーは敗けやしない、きっとショッカーの怪人に勝つ」
病室を後にして、一文字隼人は外に出ると責任感や敗北感に打ちひしがれていました。
そこに立花藤兵衛こと親父さんが、彼の後を追って来ます。
親父さんに弱音を吐露する一文字隼人。
それは一番の理解者である親父さんへの、一文字隼人からの助けを求める声にも思えるのですが、そうではないと親父さんは断じます。
一文字隼人は五朗少年を守れなかった罪悪感から再戦を果たす前にアリガバリから逃げようとしており、これはつまり総ての問題から背を向けている事なのです。
一文字隼人は明るく飄々とした態度を崩さない男ですが、ショッカーに改造された日の記憶を夢で見てうなされる描写も過去にある精神までが超人然とした男ではありません。
当然、親父さんもその事には気付いているのでしょう。
いつもと違って弱々しい一面を見せる一文字隼人を突き放すような厳しい言葉を投げ付けるのも、そういった理由がある気がしてなりません。
「この世に絶対なんてありはしない」
あくまでも親父さんのこの一言で私がそう感じたというだけで、当時の制作者方がどこまで考え込んでいたのかは知りようもありませんが、後年、こういう見方をしながら楽しめるという点に楽しみを見出だしている私のような変わり者もいるのです
この親父さんと一文字隼人のシーンは、前述した五朗少年の糞ガキムーブがある事で更に深みを帯びてくるように思えます。
かくして一文字隼人は、特訓を開始します。
そこへ「五朗のために一肌脱ぐぜ」と滝和也が現れ、「ありがとう、滝」と感激する一文字隼人。
特訓の成果で編み出した新必殺技「ライダー卍キック」でアリガバリにリベンジマッチします。
もう語りたい部分は終わったので終盤まではあっさり紹介でしたが、私の文章で興味が湧いたなら是非ともご視聴してみてください。
今はサブスクで簡単に昭和の特撮作品が観れるようになったので、良い時代になりましたね。
【解説・考察】改造人間図鑑 No.2 蜘蛛男【私見】
1971年4月3日放映、特撮番組「仮面ライダー」第1話「怪奇蜘蛛男」にて初登場した蜘蛛男。
別名・怪奇蜘蛛男。
身長198cm、体重96kg、出身地・アマゾン河流域の奥地、アジト・鈴鹿サーキット近くの森の中、武器・口から吐く自身の体重をかけても千切れない糸と人間の体を一瞬で溶かす毒針、弱点・火や熱。
主な使命は、優秀な人間を改造人間にするための拉致・誘拐。
女戦闘員を率いて本郷猛を誘拐したのも蜘蛛男である。
頭の大きな触覚は情報を集めるための巨大な万能アンテナであり、情報収集を行う蜘蛛型発信機を通じて緑川ルリ子を見張り、ショッカーを脱走した本郷猛とルリ子の父である緑川弘博士を追った。
その最期は仮面ライダーとなった本郷猛に投げ飛ばされたところをライダーキックを食らい、沫となって消滅した。
仮面ライダーが始めて交戦したショッカーの第1号怪人だが、その戦闘能力は前述の主な任務から低かったらしく、筋力もさほど強化はされていない。
その証拠にダムの城壁を蜘蛛男は糸を吐いてそれを伝い登っていくが、これを仮面ライダーは一跳びで登った事からも明らかです。
ショッカーが何故、蜘蛛の改造人間を造ろうと思ったのかですが、蜘蛛という生物は水中にも砂漠にさえ生息しており、如何なる環境にも適応している数少ない生物であるが故に諜報収集をする際に極めて有利と思われたのではないでしょうか。
その蜘蛛の本来の環境適応能力に加えて、ショッカーが与えた毒針で跡形もなく人間を溶かす暗殺任務にも有能です。
実際に緑川博士は、本郷猛の隙をついた蜘蛛男に毒針で殺害されているのですから、それは否定しようのない事実だと思われます。
一点特化型で戦闘能力が低かった蜘蛛男ですが、彼が仮面ライダーに勝つためにはどうすれば良かったのかを真面目に考察してみたいと思います。
まず始めに絶対的な条件として、仮面ライダーと直接拳を交えるような肉弾戦は避けるべきです。
仮面ライダーに蜘蛛男が勝てる見込みがあるとすれば、人体を瞬時に溶かしてしまう毒針を仮面ライダーに当てる事なのですが。
これが仮面ライダーに本当に効くのかどうかですよねまずは、これに関しては仮面ライダーを狙って蜘蛛男が毒針を撃った際に誤ってショッカーの戦闘員に毒針が刺さったのですが、この時毒針が突き刺さった戦闘員の肉体はやはり瞬時に溶けています。
仮面ライダーと戦闘員では肉体の頑強さは勿論違うのですが、戦闘員とて常人の数倍に程度の肉体の強化は施されています。
であるならば、一発では仮面ライダーを溶かしきる事が不可能でも、それが二発、三発と続けば勝利があるのではないでしょうか。
そして、肝心の毒針をどうやって仮面ライダーに当てるかですが、馬鹿正直に目の前から毒針を撃ったところで総ての能力は仮面ライダーの方が上の筈ですからそれは無駄に終わるでしょう。
こうなってくると蜘蛛男が勝つにはやはり本郷猛を二度に渡って捕らえた蜘蛛の巣状の糸を使い、仮面ライダーの動きを止めるしかありません。
この蜘蛛の巣状の糸は、オートバイでそれなりな速度を出しているであろう本郷猛とそのオートバイ、更に加えて緑川博士の動きを止める程度には頑丈です。
仮面ライダーに対してこの糸が有効かは定かではありませんが、少なくとも一瞬くらいは動きを遮る事が出来るのではないかと仮定し、先程提示したこれも憶測の域を出ない結論ではありますが、その隙に毒針を浴びせる、これに尽きます。
【解説・考察】改造人間図鑑 No.1 仮面ライダー旧1号【私感】
1971年4月3日放映、特撮番組「仮面ライダー」第1話「怪奇蜘蛛男」から登場した仮面ライダー第1号。
エネルギーの源はベルトの風車ダイナモにあり、胸の皮膚は銃弾をはねのける防弾組織で、跳躍力は垂直跳び15.3m、横跳び48.7m。
この形態の1号は俗に旧1号と呼ばれ、仮面ライダー1号の第1形態に相当します。
この旧1号は仮面ライダー第1話から第13話まで登場しました。
そして、仮面ライダーに変身するのは本郷猛。
その使命は誰かに与えられたものではなく、世界制覇を企む悪の秘密結社ショッカーから人間の自由を守るために戦う事。
本郷猛はショッカーによって改造手術を施され、改造人間仮面ライダーにされました。
それは決して彼が望んだ事ではなく、ショッカーに拉致され、気付いた時には既に肉体の改造手術は完了していたのです。
この時、ショッカーによって自由を奪われた本郷猛は、ショッカーの犠牲者を自分で最後にしたいと、その想いからショッカーと戦う道を選んでいきます。
仮面ライダーとは、えてして最初から明るいヒーローではなかったのです。
改造人間にされた悲しみを胸に秘め、自身がショッカーに奪われてしまった、人間が本来持っていて当然の自由の為に戦うのです。
本郷猛が改造される遠因を作り出したのは、彼の恩師である緑川弘博士。
仮面ライダーだけが従来のショッカーの改造人間と容姿が異なる理由付けとして、ファンからの考察は多岐に渡りますが、明確なその答えは未だに公式からは出ていません。
私が思うに、仮面ライダーを産み出すに当たってショッカーが求めていた人材の条件が知能指数600などは有名な話だと思いますが、それだけの条件をショッカーが他の改造人間にも求めていたのかというと、そうでもなく、仮面ライダーに専用のマシンがあり、なおかつベルトの風車に風力エネルギーを受けて変身する仮面ライダーの能力を考慮すると、
仮面ライダーが、明かに他の改造人間とは一線を画した存在なのは間違いありません。
そこで私は、緑川博士が主導で仮面ライダーの能力を設計したというよりは、緑川博士から本郷猛という逸材の存在を知ったショッカーが、緑川博士に設計させたのではないかと推測しております。
本郷猛をショッカーに推薦したのは確かに緑川博士ですが、本郷猛が緑川博士のご息女の緑川ルリ子とは面識が無い辺り、恩師とはいえ本郷猛と緑川博士の間にさして特別な親しい交流のようなものはないのではないか、私はそう考察していまして、少なくともルリ子が本郷猛を知らないのは劇中の様子を見ていれば明らかです。
そこから私が妥当だと思うこれはあくまでも私見なのですが、天才的な本郷猛を緑川博士は日頃から目をかけ、そんな緑川博士を本郷猛は尊敬の念を抱いていた。
緑川博士はショッカーに娘のルリ子引き合いに出され、激しく動揺してしまう昭和ライダー世界の悪の組織に目を付けられる博士にしては少々一般的過ぎる感性を持っています。
そしてルリ子の身を案じてかもしれませんが、ショッカーとの戦いには及び腰になる緑川博士が、では何故脳改造寸前の本郷猛を救ったのか、しかしその本郷猛をショッカーに推薦したのは紛れもなく自分自身なわけであって。
おそらくですが、緑川博士はショッカーの恐ろしさに屈していたのでしょう、だから本郷猛をショッカーに売り、彼を改造人間にする遠因を作り出しました、それでも知っている人間が犠牲になるのが耐えられなかったのか、もしくはその原因が自分にあるのを認めたくなかったのか、それは定かではありませんが、少なくとも緑川博士の良心が残っていたからこそ本郷猛はショッカーの思い通りの人間にはならなかったのでしょう。
そういう意味を含めての、ショッカーの犠牲者は自分で最後にしたいという本郷猛の願いに近いかもしれないその想いがあるのだとしたら、これはとても哀しくも大切な事なのではないしょうか。